A BOOK OF MAGICAL WORLD (連載その3)

第1章 SHOWMANSHIP 3

 しかしマジックでは、「上手なマジシャンは良い観客」とは言えません。
 かえって良い観客になることのほうが難しいのです。
 あなたは、いくつかのマジックをマスターすると、デパートに売っていないもの、自分の持っている本に載っていないものを求めて、同じ趣味の仲間にマジックを見せてもらうようになります。そのときにあなたは、相手に心地よくマジックをしてもらうために良き観客にならねばなりません。
 それが非常に辛いことをあなたは実感します。
 マジックをしているときは演技ですから、演じることは苦になりませんが、知っているのに知らないふりをすること、分かっているのに不思議なふりをすることは非常な罪悪感を伴います。
 しかし、あなたは相手のマジックの演出面やタイミングなどを観察し、そこから得るものを吸収し、感心したことを示し、相手を傷つけないようにアドバイスをするべきです。
「そういう見せ方だとおもしろいですね。」
「私もそのマジックが好きなんですよ。」と言ったり、
「私はこんなふうに演じていますよ。」とあなたも演じて見せるのです。
 良き観客になれるマジシャンこそが、あなたの目指すべきマジシャンなのです。
 マジックに限らず趣味の世界では、『模倣に始まり創造へ』という過程を経るものです。
 スポーツにしても絵にしても、最初は上手な人の真似をすることから始まります。
 あの人のしているようなことがしたい、あんな絵が描きたいということで、あなたは一生懸命練習します。
 そしてあるレベルに達したとき、あなたは『真似』では物足りなく感じ、オリジナルを創り出したいと考えるようになります。
 オリジナルを考案するときは、まず現象から考えるべきでしょう。現象の斬新さが、あなたのオリジナルマジックを際立たせるに違いありません。
 今までにある現象の、手法だけ変えた『オリジナル』もよく見かけます。しかし、その多くは『改悪』になりがちです。
 他のマジックを改良するときは、ル・ポールの言う『symplicity』と、プロフェッサーと呼ばれていた今は亡きダイ・バーノンの言う『be-natural』とを重視して改良するべきです。
 現象の単純さと演技の自然さが、マジックをより不思議に、感動的にさえするのです。
 マジックはもとより人に『見せる』ものは、結果がすべてです。
 あなたがどんなに努力をしたとしても、その演技をするのにどんなに苦労をしていても、失敗してはなんにもなりません。
 自信のないときはマジックをしないことです。
 演技を始める前に「初心者ですから」とか「失敗するかもしれませんが、そのときはご愛嬌で」とか言う人がいますが、あなたは決してそのような言葉を口にしてはいけません。
自信を持って演技をすることです。
 万が一失敗したとしてもそれは取り返しのつくものがほとんどです。あなたが「失敗した」ということを態度に出さなければわからないものが多いのです。
 観客に心配させてはいけません。
 観客に難しい技法を使っているのを悟られてはいけません。
 観客は、あなたのマジックを見て楽しむために来ているのです。
 あなたが求めているのは、同情やねぎらいの拍手ではなく、観客の口から思わず出てしまう驚きと感動のためいきなのです。

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